官窯温潤手とは

 宣徳官窯写し鉢 平戸藤祥 作

 

「官窯」その呼び名は、中国皇帝の器を製造した窯業地のことで、宮中で使用する高い品質の磁器が焼かれました。

また、官窯製品は海外へも輸出され、世界の著名な博物館に所蔵されています。

日本では、藩の御用窯が「官窯」と呼ばれます。
「三川内焼」は、平戸藩の「御用窯」で「「天皇陛下」
及び「将軍家」へ多く磁器製品を献上しております。

つまり、「三川内」は日本における「官窯」なのです。

 

中国・明初官窯

明時代初期(1430頃)の官窯では、「温潤な質感の白磁と、上品な染付と、紅色の発色の紅釉・釉裏紅に価値がある」とされました。

特に、釉裏紅は現代の陶芸技術を持って挑んでも完成品に至るのは至難の技です。

その官窯製品を研究し、天然素材を吟味し、最大の特徴である「手に触れる感触が柔らかく、掌中に温かく、しっとりとした潤いのある磁器」を現代に蘇らせました。

 

日本の官窯から世界の官窯への挑戦

日本に於ける「官窯」である「三川内焼」の技法を用いて「明時代初期・中国皇帝の官窯」における最高峰の技法(染付、釉裏紅、青花釉裏紅、紅釉)に挑戦致しております。

洗練された白磁の上質さと調和し、余白を際立たせる「青花と紅釉・釉裏紅」の発色を以って、紋様を描き、絵付けや器の形だけでなく、釉薬の潤いをあわせて感じる東洋磁器の真髄をお楽しみいただきたいと存じます。

 

質感と余白の美

初めて、「宣徳」の器に触れた時、じっと眺めていると…「見るのではない、感じるんだ!」と言葉をもらいました。私は「なんとオリエンタルな言葉だ!」と感動しました。

視覚からではなく触覚から焼き物にアプローチする感覚は、今の日本人が忘れかけていた「オリエンタル」な手法です。

触れた質感で「官窯の気品」を感じるのです。この感覚を西洋陶器や現代日本の陶磁器界で言及した人はおりません。

宮中で求められた「果実」と「温潤手・磁器」

600年前の中国皇室の世界では、柑橘系果物は大変珍重されました。

今のように流通も進んで無かったので、果物を食する事は、セレブである「証明」だったのです。
つまり、磁器に施される「陶画」も果物のモチーフが多くあるのは、当然の成り行きです。

そして、「ぶどう、桃、柘榴、枇杷、ライチetc」などの果物の絵と共にその質感を磁器にも求めたのです。その質感こそ「温潤」と称される感覚でした。

 

オリエンタル

感覚の優れた一部の人のみが到達できる世界、でも私たち日本人には備わった知覚。最近の研究で、今の時代に忘れられかけた「先人が勝ち得た物」を最先端の科学で遠い過去に獲得していた事を証明されつつ有ります。「温潤」とは、そんな感覚の一つです。ですが、触れてみて初めて分かる「磁器」…それは、戦後日本では到達不可能な領域であったかも知れません。

西洋の磁器は、金属食器からの派生物として捉える事ができます。金属的な食器の質感を磁器に求めているのです。そのため、釉薬の溶剤として「石灰」を使用して「ピカピカ感」を強調して有ります。そして、明治期以降日本の磁器食器もこれに追随したからです。

 

日本(三川内)から世界へアプローチ

近代から現代に至る日本の「陶磁器界」では、西洋陶磁を目指していました。

しかし、西洋磁器は釉上彩の加飾(上絵、赤絵)では成功していますが、釉薬の潤いをもあわせて鑑賞する染付や釉裏紅では、官窯の水準に遠く及びません。

また、洋陶とは、異なる価値が東洋陶磁器にあるのを言及した作家もおりません。

そこに至るには、釉薬に「石灰」ではなく「木灰」を使用する事が重要なポイントの一つとなります。
ですが、ただ「使えば良い」と言うものではなく、微妙な調合の「冴え」が必要になってきます。

「温潤」とは日本で言う所の「柞灰・釉」とは、また違った質感なのです。

 

官窯を超えて「新・官窯」へ

新・官窯とは、現代の感覚で「官窯」へ挑んだ磁器です。
「現代官窯へのアプローチ」がテーマと成りますが、官窯の持つ「気品・品格」が骨格を成します。
また、サブタイトルは、『日本の「官窯」三川内から「世界の官窯」へ挑む!』です。

極たまに「あなたの造る磁器は、何かしら温かい」との言葉を頂きます。

そんな人は、多くの人が失った「感覚」を持って生まれた人なのでしょうか?

日本の最先端技術は、「世界基準」である事は誰もが知っています。
「三川内(日本)の陶芸技術」も「世界基準」である事を証明したいのです。

十三代 平戸藤祥