こだわりの技法

こだわりの技法

官窯卵殻手 台付き すけ卵殻手・egg shell

エッグシェル(egg shell)とは、きわめて薄く軽い磁器で、江戸時代後期に、三川内皿山でのみ生産されていた焼き物のことです。

日本では、卵殻手(らんかくで)と呼称され、生地は純白で描かれた模様が透けて見え、手取りは軽くその重さを感じないほどです。

 

 

エッグシェルの歴史とその魅力

江戸時代後期、文化・文政の頃より三川内にて製作されるようになったエッグシェルは、天保年間(1830~)になってようやく少量ずつの生産が可能になりましたが、製品はそのほとんどが欧米へ向けて輸出されていました。

卵殻手コーヒー碗皿2

 

なかでも極薄手コーヒー碗等は、海外でも非常に高く評価され注目を集めていた様子が内外の資料からうかがえます。

真白の色相と軽き薄手物を愛する欧米人は、有田焼よりもむしろ三川内焼を嗜好した…(肥前陶磁史考)

厚さわずかに1mmで、甚だ美麗なり…(日本陶業 ヲ・コルシェルト編纂)

「1873年・ウィーン万国博覧会」および「1876年・フィラデルフィア万国博覧会」に、三川内焼の極薄手コーヒー碗が出品され、人気を博したことが当時の資料にも残っています。

こうして、「…いずれも本山(三川内)の特色は薄手芸術にあり」と窯業沿革史に記されるように、薄手物が三川内焼の大きな魅力であるとの評価が次第に定着しました。

 

edehon

 

真のエッグシェルを目指して

極秘密ニシテ製造イタシ…再現への壁

明治30年頃まで、海外輸出品として脚光を浴びたエッグシェルも、世界大戦の勃発により徐々に輸出が減退していき、その影響で奢侈な製品の製造が難しくなり海外輸出も途絶え、それにともない三川内皿山での卵殻手も造られなくなりました。

 

rankakute

戦後、多くの職人たちが機械的な製造法など様々なアプローチ で再現を試みましたが、いずれも高い評価で流通するまでの製品化には至りませんでした。

極秘密とされていた卵殻手の製法と、手ろくろの高度な技術の壁を越えることができなかったからです。

 

 

現代に甦る卵殻手(エッグシェル)

私は若き日に、当家に残る伝来の磁器の中に極薄手の卵殻手に強いインスピレーションを感じ、そのすばらしさに感銘を受け、以来長い間、卵殻手の研究に没頭して来ました。

皇太子

真のエッグシェル再現のために、残された数少ない資料や古文書を日本国内はもとより欧米からも収集しました。また、江戸時代の卵殻手の科学的な分析調査を重ね、三川内皿山でも秘中の秘とされた特徴的な原材料や製法を模索し、ついに捜し当てることができました。

分析と試行錯誤の結果判明したのは、原材料も天草陶石単体ではなく旧平戸領内の陶石を合わせていたのでした。さらに、極薄手の生地を手ロクロで成型することに成功し、原材料・成型法ともに江戸時代当時の最高度な技術水準での再現の夢がついに叶ったのです。

十三代平戸藤祥 藤本岳英

 

 

 

 

幕末の志士「坂本龍馬」が愛用した、龍紋様の碗「望龍碗」を現代に再現しました。

そして、その龍紋様を写した器を現代に蘇らせて、今は伝説と成った幕末長崎の香りをお送りします。

 

 

 

 

慶應三年三月、龍馬は下関の「自然堂」に妻の「お龍」さんを残し『大政奉還』へと日本を導く旅に出ます。

その折に、長州の朋友「印藤聿」へ愛用の飯碗を贈っています。
贈られた碗こそは、割れてもなお「焼継ぎ」し、使用していた愛用の蓋付飯碗「望龍碗」なのであります。

龍馬と『やきもの』との関係は。縁遠く思われますが、釉中に浮遊する「龍」こそが「龍馬」の昇竜の源だった、と思えて成りません。

「必ず、必ず帰る」との言葉むなしく同年十一月十五日京都「近江屋」で刺客に襲われ凶刀に倒れます。「望龍碗」を手離したが故に「龍馬」の命が絶たれとしたら、「龍の碗」の持つ不思議な力を感じずにはいません。

『日本陶磁器史論』(明治36年・北島似水著)によると、長崎奉行は平戸藩の窯業事業が盛況で、製品が出島より輸出されている事をうらやみ、平戸焼を手本として窯業事業に着手したと記述されており、亀山焼の原材料には、天草陶石と網代陶石を混ぜて使用したとあります。

網代陶石は、平戸藩の領地から産出され、当時、西欧で絶賛され、出島から盛んに輸出されていた『卵殻手(極薄手の磁器)』の原材料であります。
つまり、長崎奉行は、平戸焼の原材料をとりよせ、平戸焼(三川内焼)と同じ品質の磁器を焼きたかったのです。

このことは、亀山焼と三川内焼が、原材料的にも、意匠的にも、類似している事をさします。亀山焼は、現在は途絶えてしまっていますが、その目指すところは、三川内焼に今も受け継がれていると言えます。

長崎奉行の威信にかけて創設された名窯「亀山焼」を、縁ある三川内焼の技法で再現し、龍馬の愛用した器に踊る「龍の紋様」に着目して、現代の器としてプロデュースしました。長崎の伝統ある文化として、亀山焼の歴史を今に伝え、竜馬の伝説と共に末永く皆様に愛される器でありたいと思います。

 

亀山龍のアイテムは「五光窯・亀山龍」まで

製品情報

卵殻手

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古平戸

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