ちまき

「ごめんくださぁい」
玄関からの声。この声は道向かいの家の小母さんです。
玄関へ行ってみると、小母さんはにっこり笑って、手に持っていた包みを差し出しながら言いました。
「釉子ちゃん、ちまきを作ったからおすそ分けですよ。お母さんによろしくね」
渡された包みは、まだ温かくてほんのりいい香りがします。
「わぁ!小母さんありがとう!ちまき、大好き」
「そうねぇ。もう今年はこれで最後だから、また来年たくさんつくってあげるからね。」
小母さんは料理上手で評判です。
じゃあ、と手をあげて、またにっこり笑うと玄関から帰っていきました。

しばらくしてお父さんが帰ってきました。
「お父さん、向かいの小母さんからちまきをいただいたよ。」包みを指しながらそう言うと、
「やっ、ちまきか!」
お父さんは嬉しそうに包みを開けて、ひとつ手に取ると、早速竹の皮を解いて食べだしました。
お父さんも、ちまきが大好きなのです。

この地域のちまきは、竹の皮で四面体に包んであり、中身はもち米です。
和菓子タイプのものではなく、ほどよい塩加減がしてあって、えんどう豆とか小豆が混ぜてあります。
中華料理のちまきのように、お肉が入ってしっかり味付けがしてあるわけではありません。あっさりした味で、お赤飯などのおこわが竹の皮で包まれて、さらにもっちりとしたような感じです。

お父さんは、もう二つ目を手に取ると、縁側に移動しています。庭を見ながら食べるつもりのようです。
庭の小さな花壇に、去年父の日に植えたミニバラが咲いています。そのピンクを帯びた黄色の花たちが、日差しを浴びて、なんだか微笑んでいるように感じる午後です。

「三川内やきもの語り」は
三川内皿山生まれの少女 釉子が語る
やきもの小説です

 


製品情報

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