夏のお茶会

今日はとても緊張した一日でした。
地区の子ども会の行事で夏のお茶会があり、お運びのお手伝いをしたのです。
お茶会といっても、お客様は町内の大人の皆さんで、お茶をたてるのは高校生のお姉さんたちです。
公園の藤棚の下に立礼の席が設けられて、子供はみんな浴衣姿です。
久しぶりに浴衣を着て下駄を履いたので、なんだか嬉しい気もする一方で、足の指が痛くてなりません。

暑い日ざしも今日は和らいで感じられて、お手前をするお姉さんたちはいつもより綺麗に大人びて見えます。

 

お茶会も無事に済み、うちで浴衣を脱ぐと、スーッと気が抜けて楽になりました。
そのうちにお母さんがお茶の先生と一緒に家に帰ってきました。
先生は細身の方で、銀色にみえる髪を短くされていて、お年の割りわりに背筋もしゃんとされて、とても素敵な方です。
一重の着物は髪の色より淡いグレーで、帯に芙蓉の花が描かれています。

「釉子ちゃん、今日はお疲れ様」
「先生もお疲れ様でした」
「次は釉子ちゃんもお手前をしてもらいましょうね」
困った顔をしていると、お母さんが「釉子はそうとう練習しないと、あがり症だから大変だわ」と言いました。
「勉強もしないといけないし、遊びもしたいし、クラブはあるし、忙しいですよ。夏休みは宿題がありますし。」と答えると、
「三川内は自由研究の材料はいっぱいあるからいいじゃない。焼き物のことや歴史の事や。私は高麗婆の物語が好きよ」と先生がおっしゃいました。
「あの時代に、陶芸にすぐれて名前が残るなんて、すごいキャリアの持ち主じゃない」
先生がおっしゃると、三川内の昔話もなんだか颯爽としたストーリーのようにきこえてきます。
「三川内焼の女性ファンとしては、高麗婆の物語はとっても魅力的だけど?」
「あ。それいいですね。今度の夏休みの自由研究は、高麗婆のことを調べようかな」と私も言いました。

高麗婆は、三川内焼の創始者の一人とされ、女性でありながら陶技に優れていたと伝わっています。
高麗婆が造ったとされる抹茶碗のことも文書に出てくるとお父さんに聞いた事があります。
ぼんやりと高麗婆の事を考えながらも、次第に頭の中は夏休みのことでいっぱいになっていくのでした。

 

 

「三川内やきもの語り」は
三川内皿山生まれの少女 釉子が語る
やきもの小説です