ケーキとおみな酒場

バレンタインのチョコを徳さんにあげたら、ホワイトデーだからお返しと言って、ケーキをごちそうしてもらえることになりました。

「ほら、釉子ちゃんもケーキ上手だけど、プロのはやっぱりおいしいよ」と言って、徳さんは沙夜と私にケーキをすすめてくれました。

「わぁ!!これ、こないだオープンしたお店のでしょ?おいしそうー」沙夜は早速ケースを開けながら嬉しそうな声を上げました。

金色の飴細工が乗ったトルテを口に運ぶ沙夜は、お菓子のCMに出ても十分なくらいの美少女です。「沙夜は可愛いから何食べてもオシャレに見えるよね。今日のみたいなケーキだとなおさらだけど」親友とはいえ、やっぱり羨ましいです。

そういえば、徳さんも、若い時は間違いなくイケメンだったに違いないと思うほど、鼻が高くて、目が切れ長で、素敵なおじいさんです。韓流スターが素敵に年取った感じ。

「むかしから、このあたりは美人が多かったんだよ。山向こうには『おみな酒場』と言う丘があって、窯焚きの薪を争って騒動になりそうになったときに、村一番の娘に酒の酌をさせたら、皆争いを忘れて丸く収まったって言う話もあったとさ」

「へえー。きっと沙夜のとこのご先祖様じゃないかな。きっと遺伝だよ、沙夜が可愛いのって」私は初めて聞く話で面白かったので、「ねぇ、徳じいちゃん。面白い話、もっとして」とねだると、「わしはもうロクロをせんといかんからね。またな釉子ちゃん」と徳さんは細工場へと腰を上げながら言いました。

「ケーキおいしかったです。ごちそうさま」徳さんの背中に向かってお礼を言うと、作業着を握った手をちょっとあげて笑ってくれました。